木造建築と構造と木と大工の技量
ココ、盤渓山・妙福寺の龍神様のお堂“法竜水”の建て替え新築工事に参加してホント勉強になったなと思うのは技術、経験面は勿論ですが、1番は木の使い方です。
工事予算として見積り、積算した数量の原木を買い付け、それを如何に無駄なく必要な材料に挽き製材していくかというのが、宮大工の棟梁に必要な技量の一つなのです。
丸太の何処にどう鋸を入れて柱や梁を取り、節や曲がりを読みどれだけの役物が取れるかなどが、後の造作に掛ける手間に大きく影響して来ます。
木の使い方が下手だと、無駄も多く原木の石数もかさみます。
石数が増えれば当然予算がその分持って行かれます。
役物の取り方にしても原価(率)に大きく影響します。
最終的にそのしわ寄せは手間(賃)に影響して、一つひとつの作業にそんなに手間を掛けていられなくなります。
場面によっては最後の一手間を掛け惜しまなければならない場面も増え、どんなにいい技術を持っていてもそれを活かせずあまり意味の無いものになってしまいます。
なので木の使い方、木を見る事が出来るのかが本当にいい大工さんになれるか、いい仕事が出来るかどうかの大事なポイントになってくるかと思います。
ま、最近のこのプレハブ住宅のプレカット時代に
『今時何言ってんだ⁉️』
って思う組み立て大工さんや工務店がほとんどでしょうがね!
( ´Д`)y━・~~
そしてその製材した材料で建物が建っていく訳ですが、建物において1番大切なのは強度と、免震・耐震などの構造です。
木造の建物の強度を保つには一つ、木材の継手を少なくする事です。
木材の継手部分はどうしても弱くなりがちですが、これもまた1000年以上かけて培って来た日本の様々な継手などの伝統技術があります。
そしてそれを加工する為の様々な手道具も独自に進化して来ました。鋸、鑿、鉋(のこ、のみ、かんな)などが皆のよく知るそれです。
これらの道具を用いて弱くなりがちな継手や仕口が様々工夫され進化して成熟し今に至っています。
プレカットの工場で多い継手には鎌継がありますが、本当に強度の必要な部分の梁や桁の継手に多く使われているのは金輪継や追っ掛け継などがあります。
この金輪や追っ掛けの継手には、木の目を読む目とよく切れる刃物がないと必要な強度が出ませんので、木と木が合わさる面がシッカリピッタリキッチリと合わさっていないと全くと言っていい程意味がありません。
地震などの揺れに対して、その揺れのエネルギーが木の継手に伝わる際に、継手の木と木の面同士が摩擦で熱エネルギーに変換して揺れのエネルギー逃す事で免震の役割を果たします。継ぎ目の弱点を補う訳です。
流石、先人達の残した工夫と技術は凄いですね!
最近では他者(他社)との差別化などとうたって、わざわざ金輪や追っ掛け継ぎをリノベーションや増改築に用いてドヤ顔してる工務店を極稀に見ますが、聞けば鑿も鉋も替え刃式でその上切れない刃を変えずにそのまま使って継手の加工をしているのを見ちゃつたりした事があります。
組んで納めた(仮組み)見た目はそれなりに納まっているのですが、加工した面をよくよく見て見ると組みやすくする為なのか見た目良ければいいのか理屈が分からんのか、面も粗く掘り過ぎで隙間も多くおそらく強度なんてあまりでてなさそうな衝撃映像を見ちゃった事があります。
ありゃーただの自己満足なんでしょうな。。
(あ、、替え刃式を否定している訳ではなく、例え替え刃じゃなくても切れない刃物で仕事をしている事になんとも思わないのが「おいおいおい…」と思うところです。一応。)
最近は大工道具も様々な電動工具があり、手道具を使う機会は確かに少なくなりました。
今回社寺建築に関わり、またそれに関わる様々な職人さん達との会話や仕事っぷりを見ることができ、そしてそれを経験出来た事が俺のこれからの物造り人生に大きな影響と、そして時が経った後にココが大きなターニングポイントになっているのだろうなと感じます。
今回の宮大工の棟梁との出会いに感謝して、更に日々勉強、日々精進していこうと思うこの頃でした〜。
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